2010年1月16日土曜日

必読短歌18 (寺山修司2)+投稿作品10+投稿作品11

 1月12日に検討した寺山修司作品(2)にあわせて、投稿作品10(12月22日までの分)と投稿作品11(1月12日までの分)をアップしておきます。
 
 さて、2009年度の授業もそろそろ終わり。1月終わりから2月あたりに、たら~っとした親睦の宴でもしましょうか。このブログ、最後の授業のある19日までは作品投稿用に用いるとして、その後はよさそうな日時を決めるための掲示板にしちゃおうと思います。だれか幹事さん、買って出てくれないですか?


◆寺山修司(てらやましゅうじ)  一九三五~一九八三 その2◆

とびやすき葡萄の汁で汚すなかれ虐げられし少年の詩を

わが通る果樹園の小屋いつも暗く父と呼びたき番人が棲む

そら豆の殻一せいに鳴る夕母につながるわれのソネット

吊るされて玉葱芽ぐむ納屋ふかくツルゲネエフをはじめて読みき

草の笛吹くを切なく聞きており告白以前の愛とは何ぞ

蛮声をあげて九月の森に入れりハイネのために学をあざむき

雲雀の血すこしにじみしわがシャツに時経てもなおさみしき凱歌

傷つきてわれらの夏も過ぎゆけり帆はかがやきていま樹間過ぐ

歳月がわれを呼ぶ声にふりむけば地を恋う雲雀はるかに高し

失いし言葉がみんな生きるとき夕焼ており種子も破片も

遠い空に何かを忘れて来しわれが雲雀の卵地にみつめおり

向日葵は枯れつつ花を捧げおり父の墓標はわれより低し

冬の斧たてかけてある壁にさし陽は強まれり家継ぐべしや

北へ走る鉄路に立てば胸いづるトロイカもすぐわれを捨てゆく

さむきわが射程のなかにさだまりし屋根の雀は母かもしれぬ

冬菜屑うかべし川にうつさるるわれに敗者の微笑はありや

われの神なるやも知れぬ冬の鳩を撃ちて硝煙あげつつ帰る

胸にひらく海の花火を見てかえりひとりの鍵を音たてて挿す



◆投稿作品10(12月22日までの分)◆

うぐいすさんのコメント...

見え透いた嘘をつきつつ生きる日々誠意はあるか誇りはあるか
吾が夢を語る友なく一人ただ牛丼かきこみ店をあとにす
意地っぱり素直になれぬ親の前「見合いせよ」との声を無視して
恋をする回路が壊れ幾年も復旧させず「そのままでよし」
眠るだけそれが出来ずに悩みをり犬の寝顔をじっと見つめる
濁り無き澄んだ犬の眼見通せり吾の孤独の深きなること
2009年12月15日16:47

匿名さんのコメント...

クロです。少し前に恋人と別れ、作ったものです。

声を聞き気づく事実に息をのみ追ってみるけどわずかに及ばず
出るものは音水空気感じるは浮かぶ宇宙と1人の不在
りんかくをつかめていると思いこみ手がとけこんで初めて気づく
かくせない考え思い知ればこそわかっていたのに動かなかった
最後にはにおいが残る犬を見て思い出したはあの人の香
2009年12月22日2:02

青木さんのコメント...

先生が写真を貼っていたので、僕は音楽を張ってみます。
http://www.youtube.com/watch?v=BwF9G3-XhBc

髪型を同じにすれば同じ顔の兄弟姉妹がホームに並ぶ
ひそやかに寝息をたてるカリオカの肌にゆっくりロウソクを立てる
寝る前に睡眠薬を飲んでいる妻の殺意に子供の寝顔
五年目の皆勤賞を受け取った同僚のする離婚相談
本名も血液型も知っているきみに尋ねる「お名前は何?」
2009年12月22日10:28

マナ子さんのコメント...

実家の猫は、人を「適当にあしらう」ということを知っているような気がします。年齢のせい…?年内最後の授業ですが、用事で出席できなくなってしまいました。投稿だけしていきます。

洋梨と五歳の君の「なーんだ?」優しいものとは答えは“ぼく”
紅玉の酸いも甘いも噛みわけて蜜は凍らぬ0°の朝も
闇の奥 星かと思えば手が届く おや、寝ていた やがて19時
桃色のくちびる左右吊りあげて香水瓶が乙女の形してる
逆光を背負った人が一人来る 似てはいるが待ち人と違う
さっきまで確かに覚えていた夢がもう気配もない白湯の冷める頃
2009年12月22日11:00

澁谷美香さんのコメント...

ソーシキで死んだアイツが弾くギター ・・・死んだフリでしょ・・・?
黒人さんは笑いながら怒ります。つぶらなつぶらな瞳の奥で
23の夜に眠って25に起きるの、なんてナイスなアイデア!
2009年12月22日11:35

マルディさんのコメント...

おはようございます。私が仲良くしている猫は、食事のあと必ずきちんとストレッチをします。いつもえらいなぁと思いながら見ています。

わが胸ときみの腿にあるという傷の交歓いつの日か来る
クリスマス冥界からの電話待つあの娘が歌う主は来ませり
零れ落ちるピアノみたい 鳥たちが離れていった空の五線譜
2009年12月22日11:40

礒部さんのコメント...

いそべです。やっと卒論から解放されたので久しぶりに歌を作りました。

道端に続く行列追いかけて地下の世界の入口に着く
年末の本屋に並ぶカレンダー 暖簾のように吊り下げられて
意味なんて知らないけれど手をつなぎ歌うキャロルは聖夜に響く
店先で告げる時刻にあらわれる時間通りの焼きたてのパン
玄関で整列してる雪だるま 「ただいま」の頃また会えるかな
マス目から飛び出しそうなひらがなで夢が書かれた作文用紙
境内のいたるところに飾られた絵馬の数だけ願いは揺れて
2009年12月22日11:44

北寺瀬一さんのコメント...

こんにちは、北寺瀬一です。先日、ペットショップで売り物のにゃんこを手懐けてきました。にゃんこかわいいにゃんこ…サンタさん…。失礼しました、今回は学校縛りです。

教卓の真ん前の席で爆睡できる君の諸々うらやましいです
校長の「えー」の回数数えてる彼は今年で十九のウワサ
先生のイスで待たされ十五分底冷えのする理科準備室
並び立つ爪先の色が違うので先輩はやっぱり先輩ですね
「放課後、指導室へ来なさい」なんて期待するなという方がムリ!
2009年12月22日11:57

耳野さんのコメント...

こんにちは、耳野です。例のインフルエンザにかかったり、クリスマス前の年末進行だったり忙しいような暇なような、変な2週間を過ごしてしまいました。

白昼の残響は音無閑々と幾ツ頃よりうつくしがらずや
臓物の黒陰は夜長のシリンダー目盛り浮く度疼き啼くなり
袖口より血と宝石とを滴らせ嗚呼我が瞼の少年仮面
白ケ空刺して聳ゆる新宿の伊勢丹は屈式ローマンス堂
蛍光三角二重にぶれて六芒星DJファウストの夜は輪廻し
2009年12月22日12:17

炬燵さんのコメント...

炬燵です。後期の授業がはじまって相当日数がたつというのに、欠席ばかりで、しかも今日が初提出です。後期からの方は掲示板でははじめまして。前期には結構精力的に作品を出していたので、もしよければ読んでください。
大沼さんのいうウェブでの短歌ライブ。http://twitter.com/#search?q=%23tankaで行われているのを僕はフォローしていて、twitter以外のミニブログでも行われていますが、(一部では僕も参加しています)すでに大衆の短歌はライブ化されてきていますね。これにライブ的な付加価値が加わるとよいのに、と思うのですが、個人的にはモバイルのGPS機能と連動させて、位置情報と紐付けられるシステムが面白いのでは、と考えていまして……失敬、これでは短歌の話というより、ウェブサービスの話になってしまいますね。それでは、初提出に7首。全部恋愛の歌で、恋の歌じゃなくて愛の歌で、全部結局同じ内容の歌です。

どれくらい混ぜればひとつになれるのか自問に自答のホテルロビーで
がんばって素敵な呪文をとなえようとバレバレなのがさかさまな魔法
ああキミはキミのライフスタイルばっかりじゃない? もっと楽しめるパーフェクトミュージック
思い出に迷わないでポップコーンチョイスです 過去が変わっちゃう年ごろなので
会うときだけでいいじゃないって迂闊からフレグランスも準備不足ね
この恋は終わったってときの大掃除ブログに書いてた君をからかう
理想との差まで愛せるところからスタートしててスピードゆるめ
2009年12月22日13:01


◆投稿作品11(2010年1月12日までの分)◆

炬燵さんのコメント...

炬燵です。新年ですが、年頭の挨拶は喪中につき差し控えます。2010年ですね。あっという間にゼロ年代終わっちゃいましたね。それでは10年代の短歌を読んでいきましょう。

テクノロジーぼくらのさみしさテクノロジーうめてくれるのふさいでくれるの
プログラムの愛に「それでも愛する」がプラスされてもなにがたりない
タイミング次第でかみあう四次元の2ピースだけのパズルの名前
2010年1月5日2:35

マナ子さんのコメント...

あけましておめでとうございます。2000年だ!って大騒ぎしたのが、もう10年も前だとは・・ 出来の良し悪しはわかりませんが、自分では好きな三首を投稿します。

早咲きの梅はめじろに啄ばまれ まだまだ咲くよまだ咲くよう
朝になる 喉がまたひび割れてゐる うすい粥をばのまねばならぬ
あたしのがずっとあいしてるんだからやさしくしなさいのぶれすおぶりじゅ
2010年1月8日13:43

時間さんのコメント...

時間です。10首投稿します。よろしくお願いします。

○ 時ここに来てあらわに短く奪われたか長くも感じず流れ尽きてたゆたう
○ 小松菜の根が重ねるように力強く寒さが地から這い上がる喜びと呼ぶか皮肉を感じて
○ ブロッコリー日に日に大きくなるのは冬かそれと同時に身体も浮くようになる
○ 赤々と鮮やかな色に眼が冴えるずしりと重いトマトの色気よ
○ 毎日が繰り返すように立ち去りて今日と昨日と明後日が漂いながれる
○ 地に逆らうよう身体はずませ時の経過をおもんばからず前にだけ進めといった
○ 夜更けて継続的に実をかじる指が求める怠惰に任せて
○ 水を含む身体が洗われるが如く舞い上がりて中空へ放つ 
○ 何もせず何も成されず辿り着いたは魚屋の面影吊るされた籠が気になる
○ 目立つばかりを考えて朱色と銅像うなぎが二匹、只濃いだけでいいのか
2010年1月9日20:12

耳野さんのコメント...

明けましておめでとうございます。毎日寒いですね、今年もどうぞよろしくお願いします。

白熱光のごとく枝垂れよ冬蜃気紅白煙突銜えるきみへ
靑印を捺した薬紙の幾重にも折られ縮れしノスタルジヤに、
詰襟を緩めし隣の襟足が我が心軸へと鉄杭討ちて
年毎にきみよ我が骨中埋むとも洞傷からは塵雪ばかり
天吊らる少年屍体と為りて猶我がキリストはいなかのじけん
2010年1月11日13:17

礒部さんのコメント...

いそべです。授業も残り少ないですが、今年もよろしくお願いします。

沈黙のエレベーターに乗る人の視線集める階数表示町はずれ閉店近いケーキ屋の前を過ぎれば目につく苺いつからか切符売り場の前に立ち運賃表を見上げなくなり今ここに私がいないこと示す宅配便の不在届けよ目の前でスポーツ新聞めくりだし男は読めと言わんばかりに替え歌を披露している通学路並んで帰る冬の夕暮れ片手にはのらない数の歳になる節分の日の豆を見ながら
2010年1月11日23:45

青木さんのコメント...

あけましておめでとうございます。

いつまでもタイミングばかり計ってる人生だったと最後の言葉
部屋中にレモンタルトを焼く香り溢れさせたら幸せになる
2010年1月12日8:39

マルディさんのコメント...

おはようございます。昨年末、掃除をさぼって読んでいたフィガロジャポンにアナイス・ニンの特集があったのですが、その見出しには「元祖ブロガ―」…。21世紀にアナイスが生きていたとして、彼女はブログを書くタイプだろうか?そんなことを考えながらの年越しでした。今年もよろしくお願いいたします。

ヘンリーが、~の、~は、アナイスの日記を満たすヘンリー・ミラー 
恋っぽい熱でなに求めなに恐れて我をただすの?
きみ年若いヘンリー・ミラーねなにひとつ望まぬ私のその横で
日々立ち上がり消えていくものその線に従うように分解す
鏡開きの日の空は透明僕だって頑張ってると叫んでる黒南天の下でするキス
2010年1月12日9:10