2010年10月6日水曜日

KUREMUTU CLUB 2010/10/05 (後期1号)

 2010年10月5日の授業で検討した作品です。
 
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KUREMUTU CLUB 2010/10/05 (後期1号)



惡櫻カイン 1


あの人に黙って噤んで忍び愛人魚の足に口止めされて


香を焚き衣に纏い春を待ついつも彼の人鈍色コート


媚びりつく化粧(けわい)を厭い丸素肌被る仮面は真っ白き愚者


春過ぎて夏きにけらし白無垢のアイスブラストフィルターを噛む


鍵失くし我は帰る場所が無いたった一本失せた鍵ゆえ


ドア越しに猫がなくなく我を待つそれを知る我はしばし立つ



惡櫻カイン 2
 

わがたまのいきどほりのほとにそなたのうみのしたたりあなかぐわしや


いとわれしごうのやまいをおひたるをぜひなくだきたるきみぞこひしき



ゆるり

熱いのか?悪寒か?怒りか?悲しみか?何もわからぬしみる虫の音


猫の鼻みたいに濡れる僕の肩。傘は電車でただ車掌を待つ


過去と未来僕を引き裂く要因に君は笑うか?笑顔が見たい


どこまでも☆★ランナーズ・ハイ!!★☆進め、ただ。☆★ランナーズ・ハイ!!★☆途方もない道


疲れたとアトムの子供は世界の前に立ち尽くして泣いているのか?


声枯れて届かぬ両手、暑い夜。希望は遠く家はすぐそこ


君の勝ちだ。安息日が来ようとも。つくつくほーし。塵になろうと




惡櫻カイン  3

プラトンは別にそんなの言ってないほんとは僕のがうつなだけだし


気付くよねある時ふっとああだめだ僕はとっくにつんでるんだって


すみませんもじうつだけがとりえですはんせいはとくにしてませんが


鈴木 直


突き刺さる前に気づいて大通り三寒四温五cm


最寄り駅三回回って無計画 足腰立たないお遍路参り


小学校プラスチックに夢乗せて無限軌道で水平線へ


被り物正体不明の紙袋なんだかスーパー神々しい


枯れ草に浮かんだ然しもの屋形船 後ろの正面丸い影



ふぢゆう


うつ血した茗荷におもう乳液と謂つたきみとの0.14


控え目にねだる子どもの翳ゆがむ唖唖(ああ)痲疹の日の昏きかすてら


絲をひく箸先で犬犬(わんわん)と哭くのをでたらめに攪拌してゐ


everybody不潔不潔の女生徒のしずむ黒髪すり、ぷたをたを


甘夏をがさつに碎(くだ)く踏切とかなしいままにしてくれる肘


十月のうす紫の自転車の手動式なるその十月の




佐藤穂高

真っ青な空にめくれたシャツの裾ちらりと見えた肌色の夏


台風を待つ星空を見上げてる首を落とした太陽の花


身震いし軽い体(たい)「てや!」ハイキックしてしまうよな抜ける青空


星空は千年前の煌めきと知って想うの幼い君を


晴れた空見上げて青と感じたりごはん美味しと言える気持ちで



藤助

長月の彩の川原に咲く芭蕉 過客の花とただ渡れやも


出し抜けの豪雨に襲われほくそえむ 弾む心に猛ける稲妻


友の声ながく聞かずば電話あり もう秋だなと残暑の夜に


金木犀香ってくるのはいずこから 汗の滲んだ厚手のシャツで


あてどない旅を感じてさぁどこへ 素寒貧でも知らない街へ