2009年12月13日日曜日

必読短歌15(築地正子)+投稿作品9(12月8日までの分)

 ちょっとだけ忙しさが多めの週だったというだけで、UPするのが日曜日になってしまった!毎週、はじまると矢の如しで、いつのまにか週末になっている感じです。やるべきことが多過ぎるというわけですね。いろいろな機械が増えて便利に時間短縮になっているはずなのに、世間一般は、数十年前と比べると、細切れ時間で行動するように強いられ、どんどんコマネズミ化が進んでいる感じです。普通の人々を奴隷化しようとする産業界の計略は、じつに巧み。怠惰やうつ病や反抗癖などは、間違いなく人類の本然性を救わんとする本能的な反応ではないでしょうかネ。
 もう年の暮れだ…と思って、それなりの感慨を楽しめるならばそれもよし、所詮人間が勝手に決めた区切りに過ぎぬと意に介さないのもよし、でしょう。生まれてから死ぬまで、一切の区切りをつけずにダラダラと継続した意識で生きていくのもいいんじゃないかと思います。わたくし的には、とりわけ精神的には、この世の風習にあわせて生きるのをとっくにやめております。
 ところで、青木さんから教えを受けて、アップの際にちょっと工夫してみたんですが、どうもうまくいきませんネエ。HTMLの編集っていうのでやってみたら、コンピューター言語っていうのかな、いろんな文字列がだらだら出てきてしまって、いっそう楽しい字面になっちゃったんで、ま、現代詩するならそれでもいいんですが、ここはいちおう短歌するところなので、止めときました。まぁ、まだまだ工夫は考え続けますが…
 さて、今回は、授業で取り上げた築地正子の作品も17首紹介。手ごわい、したたかな精神に触れて、この混迷の世をさらに生き延びる参考としてください。こんな精神の人間が増えれば、ニッポンはふたたび強くなるでしょうね。


≪必読短歌15≫
◆築地正子(ついじまさこ)  一九二〇~二〇〇六◆

卓上の逆光線にころがして卵と遊ぶわれにふるるな

わたくしの絶対とするかなしみも素甕に満たす水のごときか

還るべき宇宙をもたずもだをるに枇杷食へといふあやなき声す

月明りさしそふ見ればうつし身は芦のごときにもつとも遠し

ちりぬるを書きすさぶ字も薄墨のかの白萩も散りつつあらむ

祖国この冥きひびきの染みつける老身いづくより朽ちゆかむ

選ばるる矜りと選ばれざる矜り胸に問ひゆく一生と知れよ

人間であること少しも疑わぬこの生を得て雨降れば傘

草の絮(わた)しきりに飛べる野のつかさ風の本音の見ゆるまで見む

蝶の眼に見えてわが瞳に見えぬものこの世に在りて闇に入る蝶

ありありて髪にやどれる月しろの死して会ふべき父ははあれば

麦の地平に立てばわれまた一本の麦にして何を何して老いたる

桃いくつ心に抱きて生き死にの外なる橋をわたりゆくなり

向日葵の面伏せてゐるかたはらを過ぎて文学のほとりにも出ず

村棲みに慣れて思へば農婦らに女言葉のなくて草刈る

背信の古傷なめて冬過ぎて春は桜とまた言ひてをり

森といふ植物界に負の生のこころあづけてみどりなりけり




◆投稿作品9(12月8日までの分)◆

青木さんのコメント...

突然の電話をずっと待っている誰も知らないブエノスアイレス
きみの手が素早く背骨をなでたとき時間は逆に流れ始めた
耳元で風が微かにゆれるたび後ろできみが話した気がする
つばを飲む音が聞こえてくるような台詞を言った三時間前
泣けばいい そのために皆屋根裏で生きのびてきたはずなのだから
2009/12/07 20:16

青木さんのコメント...

一首追加します。ねえ速くもっと激しく回してよ ぐちゃぐちゃになる私は綺麗
2009/12/08 9:24

澁谷美香さんのコメント...

おはようございますzzz惚れたゼアンタのキューティクル!一緒にパフューム踊らないかい
2009/12/08 10:29

耳野さんのコメント...
何やかやしているうちにギリギリになりました。おはようございます。

シベリヤを思わす耳帽顔埋め物思う東京はすべて吹雪く先
身にメスを入るる極寒哀惜にロマンチッカの焼き印捺して
紺制服纏う少年行進曲蜜脚でパチパチ空気を鳴らし
細密製巨大電波塔その許に磔刑となりし無数の冬よ

マナ子さんのコメント...
まだ大丈夫でしょうか?投稿します。

深夜二時、電話の向うで友が泣き半ば眠りつ相槌未練
名も知らぬ遠くの人が囁いている明けない夜を切り刻めツイート
(webサービス「twitter」で発言することをツイートと言います)
姫林檎赤みを帯びて日に日にと我の届かぬ枝先に揺れ
起こしても夜中甘えてもうんざりとした顔見せるだけ猫の忍耐
2009/12/08 12:53

礒部さんのコメント...
いそべです。遅くなってしまいすみません。抽象的な歌もすこし選んでみました。

花束を抱いた男の行く先にどんな笑顔が待つのだろうか
透明なビーズの粒が弾け飛ぶ雲ひとつない芝生の上で
急行の止まらぬ駅で待つ人の時刻表にはのらない電車
黒猫が良い夢見せてくださいと魔法使いにおねだりしてる
水彩の絵の具が並ぶ画材屋で水平線の色を見つける

8 件のコメント:

  1.  大沼です。初の一番乗りですかね?
     あの、一番乗りしておいてアレなんですけど、例のごとく俺は今週も遅刻して参上します。始業時間に間に合わせるのは物理的に不可能なので、これは確定事項です。なので、拙作の批評は、いちばん最後に回していただけないでしょうか。作者不在のまま批評をやるのは双方にとって不利益でしょうし、始業時間から参加されている方々の作品の批評時間を削ってしまうのも申し訳ないと思うのです。
     ご検討のほどよろしくお願いします。
     ちなみに、今週の短歌のうち、後半の二首はmixiボイスへの投稿が初出です。mixiボイスとは、まあ、ツイッターみたいな「呟き」垂れ流し機能です。出来たての短歌をそのまま「呟き」として投稿したというわけ。短歌でライブをやっているような感覚で、なかなか新鮮でした。これからは短歌もライブ化してみたらいいんじゃないでしょうか、なんて。
     
      ゆりかもめに寄せるうた四首
     
     求めたら頬をすり寄せ何もせず夜が明けていく基礎知識とす
     
     ゆりかもめ/妙に姿勢の良いサボり/ビルに移り気/空中散歩
     
     リクルートスイーツ君とゆりかもめ夢を語ったっけなあ螺旋で
     
     エクレアのなつかしい歌詞おもいだし、メルシー僕。メルシー雨。

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  2. これを投稿したら寝ます。おやすみ~。


    もうすぐで夜が明けるから眠らずに朝焼けを見るために抜け出す
    寂しいときみに向かってつぶやいたことを取り消すための電話
    もう二度と会えない人を思い出す事ばかりしている訳じゃない
    上がらない原稿ばかり増えてゆく 最後のプリンを食べたのは誰?
    平気だよ達也がいなくても私ひとりで鐘をついてみるから
    みんなみんな粉になってしまったね子供ごっこをしているうちに

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  3. いそべです。
    卒論に関する用事があるので、少し授業に遅れてしまうと思います。


    冬の朝眠たい顔に吹きつける地下鉄の風ぬるく気だるく

    図書館に下巻が残る文庫本 遠い手のなか始まる話

    乗りこんだバスの座席は前向いて今夜最後の主人を探す

    無機質な茶封筒の左上 真っ赤な色の花咲く切手

    グーの手と同じぐらいの柚子の実も冬をめがけて黄色く染まる

    音たてて閉じる聖書の右ページ 昔誰かが語った奇跡

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  4. おはようございまーす。今日の朝焼け、きれいでした。


    リースないままクリスマス来ちゃうね笑う玄関の清清しさ

    週末を迎えるために金曜の雨がしっとり街を緩める

    グラビアで中谷美紀が眠ってる夜請け負うと言わんばかりの

    思い出すことも忘れることもせずただきみ想う感情教育

    息抜きの『正弦曲線』その紙に昇る朝陽で文字は揺らめく

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  5. 前回のアドバイスを受けて,ちょっとゆるめに作ってみたつもりです。
    難しいですね。


    鶏肉を切り分ける時ほど指先がかじかむ時は無いと思うの

    カミソリは安全でない方がいい氷雨の夜にわたし眉剃る

    はためいた瑠璃色砂絵もとうに散り運ばれていく冬の蝶の死

    口笛の反響が痛い耳の奥 青春ドラマじゃあるまいしねぇ

    凹凸が抱きあう二人の邪魔をする これが今夜のテイク・ファイブ
    (凹凸は「おうとつ」と「でこぼこ」とどっちがいいでしょうね。決めかねます)

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  6. 北寺です。いつも駆け込みですみません。
    プラネタリウムをイメージした連作です。

    暗闇を好いことに生まれては消えるシートの間に白色矮星

    隣席の灯初心な君には眩し過ぎ瞑る目澄んだ耳に天声

    天上の彼の人が説く夏物語いけない逢瀬とミルキーウヱイ

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  7. 見え透いた嘘をつきつつ生きる日々誠意はあるか誇りはあるか

    吾が夢を語る友なく一人ただ牛丼かきこみ店をあとにす

    意地っぱり素直になれぬ親の前「見合いせよ」との声を無視して

    恋をする回路が壊れ幾年も復旧させず「そのままでよし」

    眠るだけそれが出来ずに悩みをり犬の寝顔をじっと見つめる

    濁り無き澄んだ犬の眼見通せり吾の孤独の深きなること

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  8. クロです 少し前に恋人と別れ、作ったものです

    声を聞き気づく事実に息をのみ追ってみるけどわずかに及ばず
    出るものは音水空気感じるは浮かぶ宇宙と1人の不在
    りんかくをつかめていると思いこみ手がとけこんで初めて気づく
    かくせない考え思い知ればこそわかっていたのに動かなかった
    最後にはにおいが残る犬を見て思い出したはあの人の香

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